「自転車は車道」安心走行まだ (NK2012/8/27)


フォローアップ「自転車は車道」安心走行まだ
歩行者との事故は減る 「専用レーン増やして」

 歩行者と自動車の間で事実上、中途半端な扱いになっていた自転車の交通ルール。警察が「自転車は車道通行」という原則を徹底する方針を打ち出したこともあって、歩行者との事故は減少している。一定の効果は出始めたとはいえ、荷下ろしでの路上駐車など自転車を利用する上での危険は依然残ったまま。自転車が安心して車道を走れる環境整備が課題となる。
自転車利用者に注意喚起する警察官(10日、東京都世田谷区)
画像の拡大
自転車利用者に注意喚起する警察官(10日、東京都世田谷区)
 スポーツタイプの自転車をこぐ会社員、幼児用座席に子供を乗せた主婦、キャンパスへ向かう大学生――。平日の朝、東京都世田谷区の京王線千歳烏山駅近くの通りを、様々な自転車利用者が目的地へと急ぐ。
 片側1車線の車道は自動車の交通量も多く、慎重にすれ違うバスやトラックの横を通り抜けたり後ろからクラクションを鳴らされたり。歩道へ逃れ、ゆっくり歩く高齢者を窮屈そうによけながら進む姿も少なくない。
 東日本大震災で帰宅困難を経験し、自転車通勤を始めたという世田谷区の男性会社員(33)は「車道端の電柱をよけて走るのが怖い。歩道も人にぶつかりそうで気が抜けない」と嘆く。
 もともと自転車は交通法規上、「軽車両」の扱いを受け車道を走るのが原則。警察庁は昨年10月、幅3メートル未満の歩道について自転車走行の許可を見直すよう全国の警察に通達した。周辺の車の交通量が多かったり、歩行者が極端に少なかったりする場合を除き、車道通行の原則徹底を求めた。
 警視庁は2月、千歳烏山駅前など都内110カ所を重点地区・路線に指定し、指導・取り締まりを強化。同庁の副島賢二・自転車総合対策担当管理官は「野放しだった自転車の交通ルールの周知が進み、じわりと効果が出始めた」と話す。
 都内で1~6月に起きた自転車と歩行者の事故は448件で、昨年同期と比べて約1割減少。全国では1277件で、同じく約4%減っている。
 車道走行の原則をさらに定着させるには環境整備も欠かせない。警視庁幹部は「実情として、荷下ろしの大型車が路上駐車しているなど車道走行には危険も多い」と認める。
 警察庁と国土交通省の有識者会議は4月、道路事情に応じて縁石や塗装で区切った専用道やレーンを整備するよう提言。同庁によると、3月末時点で専用レーンは、全国で計約257キロ(370区間)にとどまる。
 轟朝幸・日本大教授(交通計画)は「自転車が安全に走れる空間づくりはこれまで放置されてきた課題」と指摘。「一部の道路を自転車専用にするなど効率よく整備を進めていくべきだ」としている。