平日立ち寄る「ふらっと」消費
レジャーや買い物 週末の偏り、フラット化
日曜日に休業するユニークなフィットネスクラブがある。その名は「カーブス」(社名はカーブスジャパン)。フィットネスクラブといえばビジネスパーソンが体を鍛えようと休日にやってくるのが一般的だと思われがちだが、「カーブス」はそうした顧客層を相手にしていない。土曜日も午後1時にはお店をしめてしまう。半ドンだ。
全国に約1200カ所もあるカーブスは主に商店街の一角やスーパーの空きスペースなどを活用して営業する。会員数は約50万人。そのすべてが女性で、平均年齢は57歳(6月末)。いわゆるおばさんが主要顧客だ。最高齢は96歳だという。何回通っても月額一定(5900円あるいは6900円)という気楽さが受けて、普段の買い物の途中や帰りにふらっと立ち寄って健康作りにいそしむ。平日がかき入れ時なのだ。
広がる「毎日安売り」店
ショッピングやレジャーは土曜日や日曜日、祝日に楽しむものだったがどうやら最近はその傾向が薄れてきているようだ。総務省が毎月発表している家計調査は世帯の1日ごとの買い物を把握している。それによると今年6月の土・日曜日の消費金額は約6万4000円。曜日の並びが同じだった2007年6月の金額は約6万7000円だった。土日の天候にも左右されるが、2000年以降の同様な比較を行うと同じ傾向が見られた。
長引くデフレの効果もあってか、実は平日の消費金額も現在の方が少ない。ただし、減り幅は土日の方が大きい。土日よりも平日に買い物をする世帯が増えているのだろう。
なぜ平日消費型になりつつあるのか。それは小売店の販売戦略が変わってきたことにも要因がありそうだ。スーパーはこれまで土・日曜日にお客を呼び込もうと週末に特売のチラシを打つのが常とう手段だった。しかし、最近はエブリデー・ロー・プライス(EDLP)と呼ぶ「毎日が安売り」という販売戦略をとるところが多くなってきた。チラシもほとんどまかずに、いつ買い物しても同じ価格で買い物ができる。
このEDLPを徹底しているスーパーの西友によると「平日の買い物客が増えて、平準化しつつある」と言う。同社の店舗は24時間営業が大半だから、平日の夜中に買い物に行こうが、土日に行こうが販売価格は変わらない。
イトーヨーカ堂でも駅前立地の店舗では平日の来店客が増えているという。まだ土日がピークであることに違いはないが次第にフラット化が進みつつある。
気楽にゴルフをプレー
ゴルフ場やゴルフ練習場も平日ににぎわっている。経済産業省の特定サービス産業実態調査によると、平日にゴルフ場でプレーした利用客は2000年では全体の52.8%だったが、昨年は56.4%に上昇。同様にゴルフ練習場では53.6%から58.3%になっている。
従来プレー代は休日に比べて平日が安かったが、ビジネスパーソンは平日に会社を休むわけにもいかなかった。しかし、リタイアしたら気楽に平日プレーができる。家計調査(2011年)でみても60歳代のゴルフプレー回数が全体の52%にもなっている。
平日利用促進が永遠のテーマといわれる旅行業界。少しながらも平日利用が増えつつあるという。リクルートの旅行サイト、「じゃらん」で利用者が使うキーワードの上位に「直前割」「直前予約」「直前プラン」がランクされている。8月13~19日のランキングトップは「直前割」だった。急に自由な時間ができた人たちが、じゃらんで宿や旅行先を探しているのだ。仕事帰りにふらっと近場の温泉や観光地に行き、翌日には帰ってくるというスタイルだ。
またホテルや旅館は、泊まらなくても温泉や料理を楽しめるデイユースの充実に取り組んでいる。じゃらんにはこうしたプランが約3000もある。平日の稼働率を上げる作戦だ。
働き方、価値観が多様化し平日に休むことに抵抗がなくなりつつあることが背景にある。また、介護サービスなど第3次産業への就業者数が多くなる中で、休業日そのものが土・日曜日でない人もいる。
自分の都合のいいときにふらっと買い物やレジャーに行く消費者はこれからもっと増えるに違いない。
(編集委員 田中陽)
▼ビジネスリーダー→新製品→消費を斬る
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