山中伸弥、ノーベル生理学・医学賞、日本人25年ぶり(NK2012/10/9)

【メモ】
・iPS細胞 人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem cell)の略。
・トランプのワイルドカードと同じで、どのカードの代用もできる。
・再生医療の切り札。

山中氏にノーベル賞 生理学・医学賞、日本人25年ぶり
iPS細胞を作製、再生医療に道 成果からわずか6年

 【パリ=竹内康雄】スウェーデンのカロリンスカ研究所は8日、2012年のノーベル生理学・医学賞を、生物のあらゆる細胞に成長できて再生医療の実現につながるiPS細胞を初めて作製した京都大学教授の山中伸弥iPS細胞研究所長(50)と、ジョン・ガードン英ケンブリッジ大名誉教授(79)の2人に贈ると発表した。(関連記事総合2経済国際企業科学技術面、社会2面に
ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見する山中京大教授(8日、京都市左京区)
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ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見する山中京大教授(8日、京都市左京区)
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 日本人のノーベル賞受賞は10年に化学賞を受けた根岸英一・米パデュー大学特別教授と鈴木章・北海道大学名誉教授以来2年ぶり19人目。生理学・医学賞では1987年の利根川進・理化学研究所脳科学総合研究センター長以来25年ぶり2人目となる。
 医学研究では治療実績が重んじられがちだが、山中教授はiPS細胞の作製からわずか6年で、ノーベル賞の栄誉に輝いた。事故や病気で傷んだ組織や臓器の機能を取り戻す再生医療への応用が期待されている。受賞決定後に京都大学で記者会見し「さらにこれから研究を続け、一日でも早く医学に応用しなければならないという気持ちでいっぱいだ」と語った。
 授賞理由について、カロリンスカ研究所は声明で「細胞や器官の進化に関する我々の理解に革命を起こした」と説明した。
 山中教授は、06年に世界で初めてマウスの皮膚細胞からiPS細胞を作った。iPS細胞は受精卵のように体のどんな部分にも再び育つ。皮膚などにいったん変化した細胞が、生まれた頃に逆戻りするという発見は生物学の常識を覆した。細胞の時計の針を巻き戻せることを示した「初期化(リプログラミング)」と呼ぶ研究成果は「まるでタイムマシン」と世界を驚かせた。生命の萌芽とされる受精卵を壊して作る胚性幹細胞(ES細胞)と違い、倫理面の問題からも特に欧米社会で高く評価された。
 初期化の実現の可能性を最初に示したのが同時受賞するジョン・ガードン博士の成果だ。1962年、オタマジャクシの腸の細胞から取り出した核を、あらかじめ核を除いたカエルの卵に移植したところ、受精卵と同じようにオタマジャクシが生まれた。腸に育った細胞でも、時間が遡りすべての細胞に変化できることを示した。09年には、米ラスカー賞を山中教授とともに受賞している。
 山中教授の報告以降、世界中の研究者がこぞってiPS細胞研究に参入し、再生医療の研究競争が激しくなっている。サルの実験だが、iPS細胞が脊髄損傷や脳疾患のパーキンソン病の治療に役立ったとする成果も相次いで報告されている。文部科学省などが多額の研究予算を投入し、研究推進に力を入れている。
 授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金の800万クローナ(約9400万円)は、両受賞者が半分ずつ受け取る。
 やまなか・しんや 1987年神戸大学医学部卒業。93年大阪市立大学大学院医学研究科修了。米グラッドストーン研究所博士研究員、奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター教授などを経て、2004年から京都大学再生医科学研究所教授。10年から京大iPS細胞研究所長。
 独マイエンブルク賞、ロベルト・コッホ賞、カナダのガードナー国際賞、米ラスカー賞、イスラエルのウルフ賞など科学賞を多数受賞している。大阪府東大阪市出身。50歳。
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iPS細胞とは あらゆる細胞に成長

 ▼iPS細胞 人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem cell)の略。皮膚などの細胞から作製し、体のあらゆる細胞や組織に成長できる性質を持つ。患者に移植すれば病気やけがで失われた身体機能を回復させる再生医療に役立つと期待される。iが小文字なのは「多くの人に研究に親しんでもらえるよう米アップル社の携帯音楽プレーヤー『iPod』にちなんだ」(山中教授)。
 万能細胞の一つ、胚性幹細胞(ES細胞)は米国で再生医療への応用を目指した臨床試験(治験)が始まった。ただ別人の細胞なので、免疫の拒絶反応も避けられないという課題が残る。患者本人の細胞を材料にするiPS細胞なら、問題は起こらない。

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