2012/10/22

東南アの都市鉄道、日本に商機(NK2012/10/22)


東南アの都市鉄道広がる 日本勢、渋滞対策に商機 

2012/10/22 1:17
 【ジャカルタ=渡辺禎央】交通渋滞の悪化に悩む東南アジア諸国で、地下鉄やモノレールなど都市型の大量輸送インフラの建設が相次いで動き始める。インドネシアでは清水建設などによる計300億円超の工事の受注が内定。マレーシアベトナムでも大型事業が着工し、2016~17年に各国で一斉に開業する見通し。今後も成長が見込まれる市場で、日本企業などの商機が拡大しそうだ。
 インドネシアのジャカルタでは、円借款を受けて新設するMRT(大量高速交通システム)の地下工事で、清水建設と三井住友建設への発注が内定した。受注総額は計4兆5千億ルピア(約370億円)に近いもよう。各社は地元企業と組んで別々の区間を担当する。
 日本政府や地元当局の同意を受け、受注契約を結ぶ。今月就任したジャカルタ首都特別州のウィドド知事は落札結果の精査を要請しており、時間を要する可能性もある。
 このMRTは地下と地上を走行し、ジャカルタ中心部と南郊の15.7キロメートルを結ぶ。総事業費は1500億円超。17年の稼働に向けて、車両や信号システムの入札も近く実施する。
 インドネシアではジャワ島東部の中核都市スラバヤでも13年にMRTの工事の入札を実施する計画。同島西部バンドンでも中国企業が参画するMRT計画があり「13年末の着工を目指す」(ハッタ経済担当調整相)。
 インドネシアでは11年に自動車販売台数が89万台を超え、今年は100万台も視野に入る。ただ、渋滞の悪化により都市部では商談などのための移動に支障が出るケースが続出。通勤で1~2時間を要する駐在員も少なくない。首都近郊の工場と港湾などの間では部品や製品の輸送容量も限界に達しつつある。
 インドネシア政府や企業は、トンネル建設などが不要で建設コストが低いモノレールにも注目。スラウェシ島最大の都市マカッサルでも、複合企業のカラ・グループが約10兆ルピアのモノレール建設を計画。13年にも着工し16年の稼働を目指す。
 独コンサルティング会社SCIフェアケアによると、11年に18億ユーロ(約1860億円)だった東南アジアの鉄道インフラ市場は、年率6%近い成長を続け、16年には24億ユーロに達するとみられている。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の人口は6億人超。欧州連合(EU)加盟27カ国の人口をすでに上回り、若年層が多く、都市人口の比率も急速に高まる。このためインドネシア以外の国でも鉄道インフラの整備が進んでいる。
 マレーシアでは17年の開業を目指す総延長51キロメートルのMRT計画で、30億リンギ(約800億円)超の機材を供給する業者が決定。車両は独シーメンス、信号制御システムはカナダのボンバルディアが担当し、電力設備では日本の明電舎が受注に成功した。
 ベトナムでもこのほど、首都ハノイと南部の商都ホーチミンで計3路線の都市鉄道の建設が次々に始まった。ハノイの2件はそれぞれ中国とフランス、ホーチミンは日本が支援し、16~17年の一斉開業を目指す。
 フィリピンも民間の資金やノウハウを取り入れるPPP(官民パートナーシップ)方式での高架鉄道の延伸を促進。マニラ首都圏から北部に向けて設ける「MRT7号線」の工事を丸紅と地元企業が受注し、16年半ばに全線開通させる計画だ。
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