大正製薬、医療向け成分転用の大衆薬
生活習慣病で初 高脂血症薬、来年に
大正製薬は高脂血症を治療する一般用医薬品(大衆薬)を2013年に発売する。医療用医薬品の成分をそのまま転用した「スイッチ大衆薬」で、生活習慣病の分野では国内初のスイッチ製品となる。患者は医療機関を受診する時間的余裕がない場合などに直接薬局に行き、薬剤師の指導を受けて医薬品を購入できるようになる。
大正製薬が発売するのは中堅製薬会社の持田製薬が開発した高脂血症治療薬「エパデール」。厚生労働省はこのほど審議会の専門部会で、エパデールを大衆薬に転用することを了承した。年内にも厚労省が実際に承認する見通しで、大正は持田からエパデールを調達して売り出す。
持田製薬のエパデールの売上高は年400億円弱で、国内の高脂血症薬の中では有力製品。大正は将来的に、大衆薬としては大型製品といえる数十億円規模の売り上げを目指す。医療用のエパデールを購入する場合は健康保険の対象となるため、自己負担額は1日当たり78円と安い。大衆薬は保険の対象外で、販売価格はこれよりは高くなるとみられるが、薬局で買える利便性で一定の需要が見込めると判断した。
これまで医療用成分を転用した大衆薬は発毛剤や鎮痛薬など、投与する期間が数日から数カ月と比較的短い製品が多かった。一方で高脂血症など生活習慣病の治療では、1年以上の服用が必要な場合も珍しくない。患者は一定期間ごとに医療機関を受診する必要があり、大衆薬として購入できれば利便性が高まる。国の医療費抑制にもつながる利点もある。
ただ通常の大衆薬と比べて効果が強いため、服用回数などについて患者に正確な知識を伝えることが必要となる。大正は薬局への情報提供の機会を増やし、薬剤師が患者に的確な指導ができるように支援する。
エパデールは中性脂肪が高い状態を改善する薬。魚に含まれる高純度のエイコサペンタエン酸(EPA)を製剤している。持田は大正への製品供給を新たな収益源とするため、09年に大衆薬への転用を厚労省に申請し、審議が続いていた。同省は医療費抑制のため、一部治療薬に関しては転用を認める方向に傾き始めている。