・ティム・ウー 、コロンビア大教授
・台湾生まれの日本人が父
・日本にも関心
読書2
マスタースイッチ ティム・ウー著 米情報通信企業の栄枯盛衰
インターネットを支配しようとしているのは誰か。ネットの自由を守ろうという議論が米国で話題となった。いわゆる「ネットワークの中立性」の問題だ。本書はそのきっかけをつくった米コロンビア大教授が書いた米情報通信企業の栄枯盛衰物語である。
米国は情報通信分野における「正しい独裁者(マスタースイッチ)」の姿を模索してきた。電信時代のウエスタンユニオン、電話時代のAT&T、映画時代のハリウッド、パソコン時代のマイクロソフト、ネット時代のアップルやグーグルなどだ。
情報通信産業が他産業と異なるのは「ネットワーク外部性」が働く点だ。すなわち利用者が多いほど価値が高まり、独占状態を生みやすい。そうした独占企業は自分の地位を守ろうと新技術や新興勢力を退ける傾向があるという。
これに対し著者が提案するのが「分離の原則」と呼ぶある種の規制だ。本来であればイノベーションが独占状態を崩すはずだが、現実はなかなかそうならない。だとすれば、新陳代謝を促すためのルールづくりが必要だと説く。
台湾生まれの日本人を父に持つ著者は日本にも関心が強く、イノベーションが起きにくいのは独占を容認する風土があるからだと指摘する。日本復活のヒントを探るには、米国企業の栄枯盛衰を学ぶことも重要というわけだ。坂村健監修・解説、斎藤栄一郎訳。(飛鳥新社・2500円)
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インターネット、情報通信産業、ウエスタンユニオン、AT&T、マイクロソフト、アップル、グーグル