夏野剛、iPadだけで外出(Sankei2012/10/25)


人類の進化加速 「iモードの父」夏野剛さんに聞くスマート端末

2012.10.25 18:22 (1/3ページ)
「ほぼ常にiPadを持ち歩いている」という夏野剛さん
「ほぼ常にiPadを持ち歩いている」という夏野剛さん

 スマートフォンやタブレット端末の爆発的な普及が進んでいる。どのようにスマートフォンを使うのか、どのように生活が変わっているのか。1999 年にNTTドコモで「i-mode」を立ち上げ、現在も複数のIT企業の取締役を務めるなど、国内のIT業界の最前線を見てきた夏野剛・慶應大特別招聘教 授(47)に聞いた。

iPadだけ抱えて外出


 --まず、どのスマートフォンを使っているか教えてください

  「スマートフォンは何台も持っているけど、僕の使い方だと、iPhoneもAndroidケータイも丸1日も電池がもたない。ちょっと仕事には使えません ね。そこへ行くと、iPadが一番ですよ。普段はiPadとガラケー(従来の携帯電話)を2台持ちして、休日はiPhone5一台だけ持って出かけます」

 --iPadのいいところとはどんなところでしょうか

 「まず、パソコンでできることは一通りできるし、常に電源がオンで、3Gモデルじゃないとダメだけど(電話回線で)いつでもインターネットに繋がる。
  ふとアイデアが浮かんだとき、これまでは椅子と台を見つけて座って、パソコンを開いて、電源をつくのを待って…とやっていたのが、iPadなら立ったまま 一瞬で書き始められる。チャンスを逸しない。原稿書きに資料作り、調べ物…。何でも、仕事の効率がまったく違いますよね。
 調べ物だった ら、『あの資料はネット上に置いてある』とだけ覚えておけば、いつでもどこでもiPadで取り出して見ることができる。もう、かばんも財布も持たなくなっ たもん。いわゆる『外部脳』というか、インターネットを自分の脳の一部として使うような話があるけど、それが現実になったのがこれ(iPad)ですね。
 こういう風に使うと、電池が最優先になる。iPadを持つようになって1日で充電切れになったことはないんだけど、日曜日にiPhoneは午後4時くらいには切れちゃった」


 --Androidタブレットも多数登場しており、市場の競争は激化しそうです

  「Androidタブレットも6機種持っていますけど、うちの4歳の子が使えるのはiPadだけ。Android(端末)はどの画面のどこに何があるか把 握できなくて『パパ、わかんない』って。そういう使いやすさや操作感みたいな部分で、今のところ、アップルに1日の長があるのは間違いない。ただ、 Androidは誰でも開発できるから、いろんなアイデアが出てきて、いずれ差はなくなるとは思いますけどね。
 あと、アップルの存在が大きくなりすぎて死角が出てきている。今回のiOS6の致命的なマップ問題のように、ユーザーの利益を最大化しない経営判断が続いたら危なくなると思います」

 --iPadという「外部脳」で、どれほど変わるものでしょうか

  「もうケタが違いますよ。仕事の効率だってそうだし、情報量だって違う。例えばTwitterに仕事の合間にアクセスできるだけで、インプットできる情報 も、発信できる情報量だって増えるわけです。私は最初、あまりTwitterを使わなかったけど、今ではバッチリ情報共有に使っています。
  人類って、コミュニケーションによってノウハウとかの情報を交換、共有することで進化してきたと思っているんだけど、スマートフォンやタブレットで、情報 共有の進化のスピードがグッと上がってしまっている。これはいいか悪いかじゃなくて、便利なものは、もう以前には戻れない。ついていけない人は申し訳ない が置いていかれ、企業だったらつぶれてしまうわけですよ」


「さすが孫社長」


 --今月、ソフトバンクモバイルが米スプリント・ネクステルを買収したのはどう見ていますか?

  「うん、『なるほど! その手があったか』と思いましたよ。さすが孫(正義)社長で、非常に面白い。米国のスマートフォン普及率って実は低くて、早々にデータ通信中心の経営に移 行した日本と違い、米国キャリアは今も音声通話中心なんです。音声中心とデータ中心で、料金プランの作り方から基地局の配置までまったく異なりますから、 孫社長がスプリントを買収したことで、米国で日本と同じことが起こる可能性がある。革命を起こそうとしていて、十分ありうる話だと思います」

 --最後に、夏野さんがどんなアプリを使っているか教えてください

 「本当はどんな仕事をしているかによって必要なアプリは千差万別なんですよね。人に聞くより、自分に役立ちそうと思うアプリを使うのがいい。
 私の場合は、Twitterは『Echofon』や『Flipboard』を使っていて、『産経新聞HD』で新聞を読む。漫画の『宇宙兄弟』を読んだりもしますよ。あと、すごく使うのがタクシーを呼べる『日本交通』かな」

■夏野剛(なつの・たけし)
  1965年生まれ、早大卒。東京ガスなどを経てドコモに入社、「iモード」や「おサイフケータイ」などの人気サービスを立ち上げ、「iモードの父」といわ れる。08年にドコモ退社後は、慶応大特別招聘教授の他、動画サービス「niconico」で知られるドワンゴやグリーなどの取締役といったさまざまな活 動を展開している。