ヤフーとアスクル、消費者向け新通販サイト
商品直接調達で安く スーパーの顧客に照準
資本提携するヤフーとアスクルは15日、消費者向けの新しいインターネット通販を始める。日用品や食品を中心にメーカー約600社から直接調達し、競合サイトなどより安い価格を設定。1品単位での注文受け付けや当日配送サービスなどの利便性も打ち出し、スーパーなど小売店の顧客も呼び込む。5年以内に年間売上高2500億円規模の事業に育てる。
通販サイト「LOHACO(ロハコ)」ではまず、飲料・加工食品や洗剤、文具など約7万品目をそろえる。キリンホールディングスや花王など有力メーカーと直接取引し、調達コストを削減。2リットルのミネラルウオーターで1本90円台から購入できるようにする。メーカーと共同開発するプライベートブランド(PB=自主企画)商品も投入する。
配送面ではヤマト運輸と組み、東京と大阪では当日、ほかの地域でも翌日に商品を届ける。受け取り日時を指定できるサービスも導入し、1900円以上の注文で配送料を無料にする。5年以内にアスクルが物流拠点を現在の6カ所から12~13カ所に増やし、当日配送地域を拡大する計画だ。
通販サイトは当初、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)向けに開設し、11月下旬にパソコン向けも開く。ヤフーの決済サービス「ヤフー!ウォレット」と連携するほか、スマホのカメラを使い、画像やバーコードから商品検索や店頭との価格比較ができる機能も提供。初年度の売上高は180億円を見込む。
従来はヤフーはモール型、アスクルは企業向け商品を個人にも提供する通販サイトを手掛けてきた。商品管理が出品者任せのヤフーは迅速な配送は難しく、アスクルは集客力に課題があった。新サービスではヤフーの知名度やIT(情報技術)ノウハウ、アスクルの物流機能など双方の強みを活用する。
ネット通販業界で競合する楽天やアマゾンジャパン(東京・目黒)の利用者だけでなく、ヤフーとアスクルはスーパーなど小売店の顧客も取り込む考えだ。経済産業省によると、約300兆円とされる個人消費のうち、ネット通販の比率は2011年度で2.8%。アスクルの岩田彰一郎社長は「ネット消費が浸透する余地は非常に大きい」と分析する。
メーカーとの直接取引や物流管理を通じ、低価格の品ぞろえを実現するのは小売り大手が得意としてきた手法。ただ、近年ではアマゾンなども「メーカーとの直接取引を増やしている」(業界関係者)とされ、規模のメリットを生かして日用品や食品で価格競争力や商品数を強化している。
ネット通販の日常的な利用が広がるなか、スマホを使ってネットと実店舗の価格を比べる消費行動も広がっている。ヤフー・アスクル連合の新サービスが順調に拡大すれば、同業だけでなく小売り大手も巻き込んだ競争が激しくなりそうだ。
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