「おもちゃのまち」を発信、大学、企業で活用広がる。栃木県壬生(みぶ)町

【16-1】(下野新聞社、文・柧木沢良太、写真・野上裕之)引用編集

紙芝居を使った看護実習に取り組む独協医大の学生と吉田幸子教授

 栃木県壬生(みぶ)町には「おもちゃのまち」という珍しい地名が残る。
玩具工場が集積した「おもちゃ団地」が由来だ。
工業団地は1959年の伊勢湾台風を機に、東京都内の玩具工場が集団で移転してできた。

 いまでは金属加工など多種にわたる工場が立ち並ぶ。
しかし、最盛期で7社あった玩具生産工場は2社に減った。
工場の海外移転は加速し、逆風はやまない。

 そんな「まち」で、再びおもちゃを活用する動きが広がっている。
 「ご飯はきょうの夜。あしたの朝と昼は食べないでね」
 女子学生が、手術を控えた子どもに見立てた人形に語りかけ、紙芝居をめくる。
看護におもちゃを取り入れた実習だ。

 独協医大看護学部で試みが始まったのはこの春。
「おもちゃは子どもの喜びであり社会資源」。
そう捉える吉田幸子(よしだ・さちこ)教授(64)が「地元の産業を生かせないか」と発案した。
 「アンパンマン」などなじみのキャラクターやおもちゃは子どもの緊張を解くのに役立つ。
看護学生はそう考えている。


 一方、玩具関連会社でつくる団体や地元の若手経営者らは「おもちゃ」のまちづくりに一役買う。鉄道模型展やバザール、昔遊びなどを楽しむ「おもちゃまつり」を開催。
会場は大人のファンの姿も目立つ。
玩具メーカーが中心になってシンボルキャラクターも売り出した。

 おもちゃ団地協同組合の栃木卓夫(とちぎ・たかお)さん(51)は期待を膨らませる。
「おもちゃは子どもの遊び道具という概念を打ち破って、教育やまちおこしといった分野にも広がり、おもちゃの新たな役割が見いだせれば」



* 壬生(みぶ)町おもちゃ博物館
館内には約9千点の展示品がある。
ブリキ製の玩具や人形など大人でも楽しめる懐かしのおもちゃも多数収蔵し、子どもの楽しい遊び場にとどまらず、大人の心もくすぐる。

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