2017/8/17付 nk 岸本まりみ :抜粋編集 桑原政則
インドシナ半島の東西回廊、南部回廊 中国からの南北回廊 |
ASEANは着実に経済統合の歩みを進めている。既に域内ではほとんどの関税を撤廃した。ASEAN自由貿易地域(AFTA)が発効した1993年に11.4%だった平均関税率は、2015年時点で0.23%まで下がった。
関税がほぼなくなった結果、モノの往来は膨らんだ。ASEAN各国の15年の域内向け輸出は3056億ドル(約34兆円)と、00年と比べ約3倍に増えた。自動車や電機など製造業を中心に域内分業が進み、国境をまたいだ部品などのやり取りも盛んになっている。
2015年末にはASEAN経済共同体(AEC)が発足。ヒトやカネ、サービスの分野でも自由化推進を目指している。非関税障壁の撤廃などを盛り込んだ25年までの目標を掲げ、統合を進める考えだ。
【※】ASEAN経済共同体(AEC)
ASEAN Economic Communityの略。アセアン内の関税を撤廃。
国境を越えたビジネスのカギを握るのが、各国を結ぶ道路や鉄道などの交通インフラだ。地続きのタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムではASEANの大動脈の整備が加速する。
幹線道路の「東西経済回廊」「南北経済回廊」は15年までにほぼ完成した。さらにベトナム、カンボジア、タイをつなぐ「南部経済回廊」も、バンコクからミャンマー南部のダウェーまでの延伸工事が進行している。
中国の掲げる「一帯一路」構想に基づく高速鉄道計画も動き始めた。中国の雲南省昆明からシンガポールまでをつなぐ計画で、既にラオスで建設が始まっている。
日系企業はこうした交通インフラを生かしながら、製造・物流網を広げてきた。南部経済回廊沿いのカンボジアの経済特区ではデンソーやミネベアが進出。東西経済回廊に近い、ラオスの経済特区にはアデランスやニコンが製造拠点を構える。
同じ地域連合でも、通貨統合まで踏み込んだ欧州連合(EU)に比べると、ASEANでは経済統合のペースでは見劣りする。だが域内各国は人件費の違いなどを生かした分業により、ゆっくりと着実に連携を深めている。
(バンコク=岸本まりみ)
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