「うちのお寺」今は昔 不明朗なお布施に嫌気
2017/9/27nk を抜粋編集
村上●全(●はたまへんに深のつくり、しんぜん)さん(38)は山梨県内で8つの寺の住職を兼務している。臨済宗建長寺派寺院「花岳寺」(上野原市)はそのうちの一つ。室町将軍からの信任も厚かったとされる古先印元禅師が1340年に開山した歴史ある寺だ。
9月上旬、村上さんの案内で、花岳寺を訪ねた。「歩きにくくてすみません」。山門から本堂までの参道は膝の高さまで草が伸び放題、本堂の入り口には大きなクモの巣が張っていた。
30年ほど前に住職が死亡。京都から僧侶が移り住んだ時期もあったが、わずか3年半で出て行った。その後の十数年は「無住」になっている。
檀家総代の男性(68)は「常駐の住職がいたら安心だが、なり手がいない」と肩を落とす。周辺地域では、檀家が300軒あればお布施だけで寺院経営が成り立つというが、現在の檀家数は200軒にとどまる。
1人の僧侶が複数の寺の住職を務める「兼務寺院」は全国で急増。宗教専門紙「中外日報」(京都市)によると、仏教10大宗派6万1789の寺のうち、少なくとも1万2061の寺が無住・兼務寺院となっている。
地方の人口減で経営が成り立たないことが主な原因だが、戒名料、読経料など、弔事にかかる費用が不明朗なことも寺から檀家が離れる背景にあるようだ。
お布施の相場は地方や宗派によって違い、数千円から数十万円と差が大きい。いくら包めばよいのかはっきりしない寺にまつわる「お金」への戸惑いが寺への不信につながった面は否定できない。国民生活センターに寄せられたお布施を含む葬儀サービス関連の相談は2016年度に715件と、過去10年で1.8倍になっている。
埼玉県熊谷市にある見性院の住職、橋本英樹さん(52)は「明朗会計」で生き残りを図る。12年に檀家制度を廃止してお布施は定額にした。永代供養墓は3万円から納骨でき、遺骨の郵送も受け付ける。利用者は日本全国に広がり、収入は3倍に増えた。
【※】見性院
「仏様を利用したビジネスだ」。旧檀家の猛反発を受け、周辺寺院との交流も途絶えたが、橋本さんは「透明化で信頼を取り戻さなくては生き残れない」。
光明寺(東京・港)の僧侶、松本紹圭さん(38)は経営学の視点を檀家制度の改革に持ち込んだ。東京大卒業後に仏門に入った異色の宗教家だ。MBA(経営学修士)を取得し、12年に寺院運営を考える「未来の住職塾」を開いた。これまでに約500人の住職が参加。「寺業計画書」を提出してもらい、アドバイスを送る。
【※】お寺の未来
かつて寺院は地域社会の中心だった。松本さんは「先祖代々の寺ではなく、自分で寺を選ぶ時代になった」と考えている。昨年には「心のこもった葬儀ができるか」など10の基準を満たした寺を紹介するインターネットサイト「まいてら」を知人の僧侶らと開設。「現代に合わせた形で、もう一度『お寺のある生活』を提案したい」と話す。
【※】まいてら
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仏教系団体、信者は8000万人? 檀家の寺離れが指摘される一方、文化庁の「宗教年鑑」では仏教系宗教団体の信者数は8千万人台と高い水準にある。各団体の自己申告に基づいており「実態を反映していないのでは」という指摘もあるという。
文化庁は毎年、国内の宗教団体の信者数を調査。1949年の仏教系の信者数は約3695万人、90年には約9625万人と2.6倍に増加した。その後も8千万~9千万人台で推移している。
信者数の集計は各団体に委ねられており、正確な統計を作るのは難しい。仏教にキリスト教、神道など他宗教の信者数を足し合わせると国内の総人口を超えることもある。
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