米仏、原発ゼロに批判(NK2012/9/11)


原発ゼロに批判 エネ政策に反映焦点
青森県、燃料再利用巡り 原子力政策、米仏と溝

 民主党が示した「原発ゼロ」方針に批判が強まっている。使用済み核燃料を再利用する政策の転換を巡って、関連施設がある青森県が強く反発している。日本の原子力政策に協力してきた米仏側も水面下で日本政府に遺憾だと伝えた。政府は党の提言を受け、中長期のエネルギー政策を週内に取りまとめるが、批判をどこまで反映させるかが焦点になりそうだ。
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青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場
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青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場
 民主党の方針に強く反発しているのが青森県。使用済み核燃料施設が立地する青森県六ケ所村の古川健治村長は10日、「今のところ政府から接触はない」と党側の頭越しの提言に強い警戒感を示した。青森県側も「何の説明もない。いきなり『再利用撤退』を打ち出すなら、反発は当然だ」と強く非難している。
 六ケ所村と青森県は1998年に日本原燃との間で「再処理(再利用)が著しく困難になった場合は使用済み燃料を搬出する」との覚書を交わした経緯がある。村議会は民主党の提言に沿って国が再処理から撤退する場合、保管している使用済み燃料を村外に持ち出すよう求める構え。政府も閣僚を派遣して説得する方針だが、調整は難航しそうだ。
 日本の方針転換は国際的にも波紋を広げている。あおりを受けるのは原子力を戦略産業と位置付けるフランスだ。日本はこれまで仏英に再処理を委託してきた。仏で再処理を手掛けるのは政府が約9割の株式を保有するアレバだが、日本からの再利用受託は大きな収入源であり、日本の政策転換は同社の経営悪化に直結する。
 米国との外交関係も課題となる。核兵器を保有しない日本が、プルトニウムを生産する核燃料サイクルの実行を国際社会に認められているのは、日米原子力協力協定で米国から「お墨付き」を得ていることが大きい。
 クリントン米国務長官は8日、ウラジオストクで野田佳彦首相と会談し、日本の原子力政策論議への関心を表明した。米国は原子力政策の定まらない日本に不信感を強めているとの見方もある。関係閣僚は10日午前、官邸に集まり今後の原子力政策を協議した。玄葉光一郎外相も参加した。
 経済界民主党案に批判を強めた。かねて原発ゼロ方針に電気料金が上昇して産業が空洞化しかねないなどと批判してきた。経団連の米倉弘昌会長は10日の記者会見で「原発ゼロという決め打ちは実現困難だ。目標を決めただけで技術の発展は望めないし、人材も流出する」と危機感を示した。経団連幹部は、原発ゼロを求める世論が強まっている現状を踏まえ「せめて結論を(総選挙後に)先延ばししてほしい」と語った。
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