個人間ネット取引拡大、スマホ普及が追い風 ヤフー、来月新サービス
インターネット上で消費者同士が商品を売買する「個人間取引」が広がっている。ヤフーは10月に個人がネット通販のように商品を販売するサイトを新設。有力ネット企業によるオークション(競売)事業参入も相次ぐ。出品や購入が容易なスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の普及が後押しし、市場は拡大中だが、トラブルや犯罪の防止に向けた一層の取り組みも求められる。
ヤフーは10月1日に「ヤフー!バザール」を立ち上げる。衣料品や家電製品のほか、家事代行などのサービスも売買対象となる。出品者は価格を設定してサイトに商品を掲載。利用客は気に入った商品を先着順に購入できる。ヤフーは出品者から手数料を受け取る。
■競売より手続き簡単
新サイトは競売の「ヤフー!オークション(ヤフオク)」より手続きが簡単なのが特徴だ。価格は固定され、初心者には煩雑に映る入札や落札者と出品者の成約のためのメール交換が不必要で、個人によるネット通販といえる。配信されるスマホ向けアプリなどを使えば最短30秒で出品も可能という。数年で3千億円規模の取扱額を目指す。個人が出品できる通販ではアマゾンジャパン(東京・目黒)の「マーケットプレイス」も取扱量を拡大している。
個人間取引の代表的な市場、ネット競売への参入企業も増えてきた。衣料品通販サイト「ゾゾタウン」のスタートトゥデイは中堅ネット競売会社を買収。今年度中に通販の顧客・商品情報を活用した、中古衣料品の競売を本格化する。サイバーエージェントもスマホに特化したネット競売を8月末から始めた。
競売などの個人間取引市場はリーマン・ショック後、決済などを巡るトラブルへの懸念もあり、一時縮小傾向にあった。だがサイト運営企業が補償サービスや偽造品のチェックを強化。中古品で合理的に買い物を済ます消費者意識の広がりなどで再び拡大に転じた。
スマホの普及も追い風だ。パソコンやデジタルカメラよりも出品者は写真を掲載しやすく、入札者は競売の変動価格を手軽にチェックできる。最大手のヤフオクの取扱額は2011年度に4年ぶりに前年実績を上回った。野村総合研究所は競売市場が16年度に11年度比2割増の9782億円に伸びると予測する。
■トラブルの防止課題
ただ減少傾向とはいえ、ネット競売に関する国民生活センターへの相談件数は年間7000件を超え、手数料や不当表示に関するトラブルも残る。若年層やシニア層の利用者が増えることも予想され、より安全な利用環境の整備が引き続き課題といえる。
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