夏目漱石 『草枕』 音読

 夏目漱石  『草枕』 音読

『草枕』は、初期の名作です。
世の中の しがらみ を憂えています。

漱石はこの頃病気がちで、
近所のあたたかい絆(きずな)も、
しがらみ
に思えていたようです。

文章は、テンポよく音読しやすいです。


音読の効用
  • 音読は、目と耳をともに使うので、記憶しやすいです。
  • ストレスが発散し、気持ちが落ち着きます。
  • のどの筋肉がきたえられます
作品の表記について
  • 読みやすいように、表記を改めた所があります。
  • 差別的な表現も、原作の独自性を保つために、そのまま表記しました。



山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。


 智(ち)に働けば角(かど)が立つ。
情に棹(さお)させば流される。
意地を通せば窮屈(きゅうくつ)だ。
とかくに人の世は住みにくい。

 住みにくさがこうじると 、安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいとった時、
詩が生れて、が出来る。

 人の世を作ったものは、
神でもなければ鬼でもない。

やはり向う三軒両隣に ちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、
越す国はあるまい。

あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は、人の世よりもなお住みにくかろう。

 越す事のならぬ世が住みにくければ、
住みにくい所をどれほどか、
くつろげて、(つか)のの命を、
束の間でも住みよくせねばならぬ。

ここに詩人という天職が出来て、
ここに画家という使命が(く)だる。

あらゆる芸術の士は、人の世を長閑(のどか)にし、
人の心を豊かにするが(たっ)とい。

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