観光と避難 一目で案内 NPO法人武蔵観研 川越の地図作製



川越街中避難・観光地図
*武蔵観研が作った地図の一部。川越城周辺(右側)に比べ、菓子屋横丁周辺(左側)に避難場所(緑色の部分)が少ないことが分かる


歴史ブームなどで観光客が増えている川越中心部の観光案内と、大規模災害時の避難場所が一目で分かる地図を、地元のNPO法人「武蔵観研」が作製 した。観光と防災を一枚に融合させた地図は珍しい。大規模災害時に観光客の安全を確保するためで、川越市で四日に開く観光情報学会で発表する。 (五十住 和樹)

武蔵観研会長で、同市在住の東京国際大教授桑原政則さん(69)が中心となって作製。武蔵観研は、二〇〇七年に学者や地元の企業関係者らが集まっ て観光施策を検討しようと発足し、翌年に法人化した。
当時、市中心部に転居した桑原さんが、街歩きで人気の市街地の道が複雑で狭く木造建築物も密集し、地震など大規模災害時に観光客が特に危険だと痛感。緊急避難場所や防災拠点などを盛り込んだ観光地図作製を計画した。

(桑原政則 注:富田忠、小林義朗両氏、石井昭三・木所勝邦副会長も中心メンバー。他に貴重な提言をくださった会員の皆様)


桑原さんによると、観光客は高齢者が多いため、文字を大きくし見やすい地図にするため工夫した。学校や神社など、避難場所は緑色に統一。病院や自 動体外式除細動器(AED)設置場所なども明記した。また、国土交通省防災情報提供センターや川越市役所などの携帯電話のサイトに直結するQRコードを掲載して、災害時にリアルタイムで情報を得られるようにした。
地図は改訂を重ね、約三万枚を作製し、観光協会などに置いて来客に既に配布。より多く無料配布するための資金にと企業広告を集めたり、地図をレジャーシートに印刷することも計画しているという。
桑原さんは「地図を見れば、蔵造りの町並みや菓子屋横丁の近くに避難場所がないことがよく分かる。車が渋滞して身動きが取れないような状況が、被災時には心配」と指摘。「防災の観点を盛り込んだこのような案内図が、ほかの観光地でも広まってほしい」と話している。
観光情報学会は四日午前九時三十分から、川越市連雀町の蓮馨(れんけい)寺で。「広域観光おこし」をテーマに発表やパネル討論がある。関東圏で初開催という。入場無料。