中国、9人が13億人統治(NK2012/8/20)


(池上彰の必修教養講座)「現代世界の歩き方」(13) 中国、9人が13億人統治

2012/8/20付
日本経済新聞 朝刊
1305文字
 今年秋、中国共産党の党大会が開かれ、総書記が胡錦濤氏から習近平氏に交代する予定です。そこで今回は中国共産党の構造を取り上げます。
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 中国の人口は13億人。この中国を統治する中国共産党の党員数は8260万人です。
 中国共産党の党大会は5年に一度開かれます。党の方針を決める大会が5年に一度しか開かれないということは、大会は単なるセレモニー。実際の党の運営は、党員から選ばれた中央委員会が行います。
 ところが、中央委員会も年に一度しか総会が開催されません。そこで、さらに上の中央政治局が実権を握ります。中央政治局の委員は25人。さらにこのうち9人が常務委員となって、日常の方針を決定しています。
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 13億人の国民をたった9人が統治する構造です。この9人にも序列があります。トップは胡錦濤総書記。総書記は国家のトップである国家主席にも就任します。2番手は呉邦国氏、3番手が温家宝首相です。温家宝氏がナンバー2かと思いきや、実はナンバー3なのです。
 呉邦国氏は全国人民代表大会常務委員長。日本でいえば衆議院議長のような立場ですが、実際は名誉職に近い存在です。
 今年秋の党大会で、常務委員9人のうち7人が引退します。中国共産党の常務委員には定年制があって、68歳を超えている人は引退する慣習になっているからです。
 残る2人は序列6位の習近平氏と7位の李克強氏。習近平氏が総書記となって来年春の全国人民代表大会で国家主席に就任し、李克強氏が首相になると見られています。
 中国共産党の内部にも派閥があります。大別して「太子党」と「団派」です。太子党の「太子」とはプリンスのこと。つまりは二世です。親が共産党や軍の幹部だったことで出世した人たちが太子党と呼ばれます。習近平氏は父親が元副首相。そのつながりで引き上げられてきましたので、太子党に色分けされます。
 これに対して団派の「団」とは共産主義青年団のこと。共産党の青年組織です。共産主義青年団での活動ぶりが評価されて共産党に入党。そこで着実に実績を積み重ねて出世した人たち。つまりは実力派です。
 李克強氏は胡錦濤氏や温家宝氏と同じく団派です。胡錦濤氏は李克強氏を自分の後継者にしようとしましたが、太子党に抵抗され、李克強氏は序列で習近平氏の下になったといわれています。
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 中国は中国共産党による「事実上の」一党独裁と表現されます。それは、建前として共産党以外に8つの「民主党派」があるからです。
 ところが、これら8つの政党はいずれも綱領に「共産党の指導を受ける」と明記しています。なので、「事実上の」一党独裁と表現するのです。他の政党は設立すら認められていません。
 中国共産党の組織は中国内のあらゆる場所に存在しています。役所はもちろん、警察、裁判所、マスコミの中にも共産党の組織があります。中国のすべてを動かす巨大な組織。そのトップを決める党大会だけに、この秋の開催が世界から注目されているのです。