仏アレバ、三菱重工と原発売り込み(NK2012/9/29)

【メモ】
  • 脱原発を決めたのはドイツだけ。
  • スイスも再び新たに原発建設。

原発、三菱重工と海外開拓 仏アレバCEO強調
世界発電量1.5倍見込む 新興国中心、30年までに

 【パリ=竹内康雄】フランスの原子力大手アレバのリュック・ウルセル最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞とのインタビューに応じた。同CEOは原子力による世界の発電能力は東京電力福島第1原子力発電所の事故後も新興国を中心に拡大が続き、2030年までに約1.5倍になるとの見通しを示した。成長が見込める中東やアジアなどで三菱重工業と引き続き協力して市場開拓を進めるとも語った。主なやりとりは次の通り。
インタビューに答える仏アレバのウルセルCEO
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インタビューに答える仏アレバのウルセルCEO
 ――日本の脱原発に絡む動きをどうみるか。
 「日本政府は一度、脱原発の方針を公表したものの最終的には柔軟性を持って見直しながら進めていくことが分かった。日本の外の人間なので言い方が難しいが、日本は福島第1原発の事故のショックが強く理性的な判断が難しいのではないか。原子力政策は長期的視点が不可欠だ」
 ――日本が脱原発を進めると、どういう状況になると考えるか。
 「原発事故後、日本が火力発電に使う天然ガスを世界から調達した結果、価格が上昇した。日本が脱原発を進めるとガス需要がさらに増える。中国の消費も増えつつあり、日中でアジアのガス需要を吸い上げる形になる。この結果、電気料金も上昇。企業の競争力や家計に影響を与えるだろう。脱原発を決めたドイツも同様の状況だ」
 「再生可能エネルギーは現時点では政府からの補助金なしでは成り立たず普及に時間がかかる。脱原発を進めると、その穴を天然ガスや石炭などの火力で埋めることになる。原子力は日本や欧州など資源の少ない地域にとって、競争力の高い電源だ」
 ――アレバは日本の事故処理に協力している。
 「事故処理は計画通り進んでいる。着実に収束に向かっていると言っていい。使用済み核燃料の取り出しという難しい作業が残るが、可能だと確信している。廃炉に向けて、アレバは日本政府や東京電力に複数の提案をしており、その返事を待っている」
 ――日本には原発への不安がある。
 「国民の信頼を得るには情報を公開し、国民とのコミュニケーションを深め、国際社会と意見交換することが重要だ。欧州では原発事故後、2カ月で安全評価(ストレステスト)をすると決め、1年かけて実施した。アレバとしては、今後5年で22億ユーロ(約2200億円)を投資し、保有する原発の安全を確保する」
 ――今後の海外展開の戦略は。
 「アレバは三菱重工業と協力して海外での原発売り込みを図っている。日本政府の方針で、この関係が変わることはない。ヨルダンやベトナムで事業を進めたい。次世代原子炉の『EPR』は仏中フィンランドの3カ国に建設中。発電所の建設・運転から再処理までパッケージで売る」
 「原子力による世界の発電能力は現在390ギガワット。毎年2%ずつ伸び、30年には580ギガワットになるとみる。発電能力に占める原子力の割合は13%でずっと変わらない」
 ――仏大統領は総発電量に占める原子力の比率を現在の75%から25年に50%に下げると公約した。
 「50%でも原子力が仏電力の大きな部分を占めているのは変わりない。フランスに再生可能エネルギーを導入し、電源の多様化を図るのが目的だ。この動きは脱原発にはつながらない」

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